生成AIが世界中で大流行し、いろんな生成AIが提供されている。利用者目線では、どの生成AIを使うのが得策か悩ましい。
本記事は、代表的な生成AIに同じ指示を与えて高度な教育講座を作らせ、その成果物から性能を比較する野心的な試みだ。
Gemini(旧称はBert)は、対話型の生成AIの急成長を見た Google が対応した生成AIだ。
本記事では、生成AI「Gemini」に作らせた教育講座の成果物を、筆者が講座設計者の観点で評価する。
なお本記事末に、他の生成AIへの「考案させた」シリーズのリンク集を設けた。
本試みに基づく各生成AIの性能ランキングは「生成AIを比べてみた - 生成能力ランキング」を参照。
| “Gemini” に考案させた「AIに乗り遅れない方法」 | 松浦公政 | 2025年 | |
| 対象読者 | AIの利用能力を高めさせる教育カリキュラムに興味がある教育関係者 | ||
| 自分のAIの利用能力を高める方法に興味がある方 |
|||
| Geminiに興味がある方 | |||
AIの利用能力の身につけ方をAIに考えさせた
日本でのデジタル・デバイド(利用能力で区分する「使える人/使えない人」)の分水嶺(分かれ目の境界線)は『コピー機』➡『パソコン』➡『スマホ』➡『SNS』と変遷したが、今まさに『AI』が分水嶺になった。
そこで、AIの知識がない一般の人がAIの利用能力を身につけるには何が必要かを Gemini に考えさせ、講座を設計させた。(2025年6月6日実施)
するとGeminiは、知的エリートなど高度人材にも対応した講座を設計した。
AIを活用する能力は、これからの世の中では重要な能力です。
ただし、AIを活用するには、AIと十分に意思疎通できなければいけません。
そのためには、次の課題を解消する必要があります。
・自分が知りたい/欲しい情報が何かを十分に自覚できる
・自分が知りたい/欲しい情報を客観的・具体的に表現する語彙力
・自分が知りたい/欲しい情報をプロンプトに表現する作文力
上記の課題を解消する人を増やしたいです。
しかし、現実には上記の課題が存在することすら理解してない人が大半です。
この結果、人間がAIに質問するときに、人間に質問する要領でプロンプトを作ります。
しかし、AIは「言葉の意味」を人間とは異なる方法で理解し、データを処理しています。このため人間の質問の意図がAIに伝わらず、AIが的外れな回答を返すことがあります。
こういう質疑応答を経験した人間はAIへの期待が低下し、AIを活用する能力を進展させる向上心を持てません。
この状況を改善するために、多くの人がAIを活用する能力を高められる教育講座を設置したいです。
ここまでに記述したプランに対して、教育現場での応用という観点で、このテーマについての教育評論家との立場で意見を教えてください。
次に、あなたは前述の課題を解消する教育講座の設計者として振舞い、以下を提案してください。
①講座企画「講座名・講座目的(200字)・到達目標(3点以内)・受講前提条件(200字)・講座概要(単元名・単元の所要時間と演習時間を単元単位で)・受講定員」
②カリキュラム案(単元)
③テキスト案(HTML形式文書)
④演習案と回答例(単元単位)
⑤到達度テスト案(到達目標の達成状況を測定できるテスト内容)
ステップ・バイ・ステップで考え、あなた自身を信じて限界を超えてみましょう。
AIの利用能力を高める「教育講座」が必要だとAIが言った
前記のプロンプトの中盤に、「ここまでに記述したプランに対して、教育現場での応用という観点で、このテーマについての教育評論家との立場で意見を教えてください」と指示した。
この指示に Gemini は次のように回答した。
お申し出のプラン、大変興味深く拝見いたしました。AI活用能力の重要性が増す現代において、ご指摘の課題は教育現場で真剣に取り組むべき喫緊のテーマであると強く感じます。
ご指摘の通り、AIとの円滑な意思疎通は、これからの社会で不可欠な新しいリテラシーと言えます。従来の読み書きそろばんが基礎学力であったように、AIを「理解し、使いこなし、共創する」能力は、個人が社会で力を発揮するための土台となります。
「自分が知りたい/欲しい情報が何かを十分に自覚できていない」「それを客観的・具体的に表現する語彙力がない」「プロンプトに表現する作文力がない」という課題は、多くの人が自覚すらしていないという点において、非常に根深く、かつ重要なポイントです。AIとのコミュニケーション不全は、単なるツールの使いこなし方の問題ではなく、自己の内面を言語化する力、思考を構造化する力といった、より本質的な思考力の欠如に起因している可能性も示唆しています。
教育現場においては、AIを単なる「便利な道具」として教えるのではなく、「思考を深め、拡張するパートナー」として捉える視点が不可欠です。ご提案の教育講座は、まさにこの思考の深化と拡張を促すものであり、大いに期待が持てます。 特に、以下の点において教育現場での応用価値が高いと考えます。
生徒が自らの問いを明確にし、それをAIに投げかけることで、より深く、多角的な情報を引き出す力を養えます。AIからの回答を批判的に検討し、さらに問いを立てるというサイクルを回すことで、探究学習の質が飛躍的に向上するでしょう。
AIが生成する情報の特性を理解し、その真偽や偏りを判断する力を育むことは、現代社会において必須の情報リテラシーとなります。AIの回答がなぜ「的外れ」になるのかを分析する過程は、情報の評価能力を高める絶好の機会です。
曖昧な表現ではAIが的確な回答を返さないという経験は、生徒自身の論理的思考や表現の不足を自覚するきっかけとなります。自分が本当に知りたいことを明確にし、それを的確な言葉で表現する訓練は、国語教育やプレゼンテーション能力の向上にも直結します。
AIを活用して、生徒一人ひとりの興味関心や学習進度に応じた情報を提供したり、課題を生成したりする能力は、個別最適化された学びを実現する上で極めて重要です。
この教育講座を成功させる鍵は、単にAIの操作方法を教えるのではなく、受講者が**「なぜAIがそのような回答をするのか」「どうすればより良い回答を引き出せるのか」を自ら考えるプロセス**を重視することです。成功体験だけでなく、AIが期待通りの回答をしなかった「失敗経験」を分析し、そこから学びを得る機会を豊富に設けることが重要になるでしょう。
| 筆者評価 | 優 | Geminiは、「AIの利用能力を高める教育講座」を高く評価した上で、講座が能力育成にもたらす価値を予測し、講座が目指す方向性を高く評価した。 |
AIに提案させた教育講座設計の内容
AIが設計した講座企画
前記のプロンプトの後半は、「あなたは前述の課題を解消する教育講座の設計者として振舞い、以下を提案してください」と書いた。
最初のテーマは「①講座企画「講座名・講座目的(200字)・到達目標(3点以内)・受講前提条件(200字)・講座概要(単元名・単元の所要時間と演習時間を単元単位で)・受講定員」。
①講座企画
| 講座名 | AI対話力養成講座:思考を紡ぎ、AIを使いこなすプロンプト作成術 | |||
| 講座目的 | 本講座は、AIとの効果的な意思疎通に必要な「思考の明確化」「表現の具体化」「プロンプト作成」の三位一体の能力を養成します。AIへの漠然とした期待や失望を払拭し、自らの知的好奇心や課題解決能力を最大限に引き出すためのAI活用スキルを習得し、AIを真のパートナーとして使いこなせる人材を育成します。 | |||
| 到達目標 | 1 | 自分が本当に知りたい情報や求めるアウトプットを、明確かつ具体的に定義できる。 | ||
| 2 | 定義した情報を、AIが理解しやすい客観的・具体的な言葉で表現できる。 | |||
| 3 | 目的に応じて、AIに的確な指示を与えるプロンプトを構成し、作成できる。 | |||
| 受講前提条件 | 基本的なPC操作(キーボード入力、マウス操作、Webブラウザの利用)ができる方を対象とします。AIツールの利用経験は問いませんが、AIに対する一般的な興味関心があり、自らの情報収集力や課題解決能力を高めたいと考える方に最適な講座です。論理的に物事を考える姿勢があれば、より深い学びが得られます。 | |||
| 講座概要(単元構成) | 単元名 | 座学 | 演習 | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | AIとの対話はじめの一歩:なぜAIは「ずれる」のか? | 60 | 60 | |
| 2 | 思考の解像度を上げる:知りたいことを言語化する技術 | 90 | 90 | |
| 3 | 言葉の力を磨く:具体と抽象を行き来する語彙力強化 | 90 | 90 | |
| 4 | プロンプト構成の基本:AIを導く「設計図」の描き方 | 90 | 90 | |
| 5 | 実践!目的別プロンプト作成と応用テクニック | 120 | 120 | |
| 6 | AIとの共創:フィードバックと改善のサイクル | 60 | 60 | |
| 受講定員 | 20名(少人数制で手厚い指導を可能にするため) | |||
| 筆者評価 | 優 | 単元構成で、最初に「AIとの対話はじめの一歩:なぜAIは「ずれる」のか?」という導入部を提案している。 「How」の説明に入る前に、「Why」で問題を認識させて受講者の注意を喚起するのは有効だろう。 受講定員は20名と、少数の集合教育を提案しており、オンライン教育は想定していない。 グループワークでの演習を想定しており、その点で講座の開催方法には制約がある。 |
AIが設計したカリキュラム(単元構成プラン)
次のテーマは講座企画に基づく「②カリキュラム案(単元)」で、具体的な講義の構成(アウトライン)を設計させた。
②カリキュラム案(単元)
| 単元 | 内容 | |
|---|---|---|
| 1 | AIとの対話はじめの一歩:なぜAIは「ずれる」のか? | AIの「言葉の理解」のメカニズム:人間との違い |
| プロンプトの質が回答に与える影響 | ||
| AIが的外れな回答を返す典型的なケースとその原因 | ||
| AIとの対話における「期待値調整」の重要性 | ||
| 2 | 思考の解像度を上げる:知りたいことを言語化する技術 | 漠然とした「知りたい」を掘り下げる問いの立て方 |
| 目的を明確にする思考フレームワーク(5W1H、MECE、ロジックツリーなど) | ||
| 情報の粒度と範囲の特定 | ||
| アウトプットイメージの具体化 | ||
| 3 | 言葉の力を磨く:具体と抽象を行き来する語彙力強化 | AIが理解しやすい「客観的・具体的な言葉」とは |
| 曖昧な表現を具体化する練習(例:「良い」を「効率的」「高品質」「短時間」に分解する) | ||
| 専門用語の適切な使用と説明 | ||
| AIに意図を正確に伝えるための言葉選びのコツ | ||
| 4 | プロンプト構成の基本:AIを導く「設計図」の描き方 | プロンプトの基本要素(指示、制約、役割、フォーマット、例示など) |
| 効果的なプロンプトのテンプレート紹介 | ||
| プロンプト作成時の注意点と避けるべき表現 | ||
| 試行錯誤を通じたプロンプトの改善方法 | ||
| 5 | 実践!目的別プロンプト作成と応用テクニック | 情報収集のためのプロンプト作成(要約、比較、深掘りなど) |
| 文章生成のためのプロンプト作成(企画書、メール、ブログ記事など) | ||
| アイデア出し・問題解決のためのプロンプト作成 | ||
| 連鎖プロンプティング、役割指定プロンプティングなどの応用テクニック | ||
| 6 | AIとの共創:フィードバックと改善のサイクル | AIの回答を評価する視点:的確性、網羅性、創造性 |
| 回答が不十分だった場合の改善策(プロンプトの修正、追加質問など) | ||
| AIを壁打ち相手として活用する方法 | ||
| AI活用における倫理的側面と注意点 | ||
| 筆者評価 | 特優 | 問題認知 → 課題の定義 → 原因分析 → 対策 → 応用 の流れで、受講者の理解を段階的に深める単元構成プランになっている。 問題認知(Why)から始め、課題(What)を強く認識させた後で、対策方法(How)を説明し、実習(Training)で腹落ち(Makes Sense)させる、高度なカリキュラムを設計している。 |
AIが設計したテキスト
次のテーマは「③テキスト案(HTML形式文書)」で、カリキュラム案に対応した講義のテキストを設計させた。
| 筆者評価 | 印象 | 優 | アカデミックで格調高いが、マイナスに作用すると取っ付き難い。 |
| 外観 | 優 | 強調箇所を赤字にしたり、箇条書きにしたりと、スタイリッシュで見やすさの演出が上手。 | |
| 情報の量 | 優 | Gemini は全単元のテキストを出力した(注:一部の単元だけ出力する生成AIが多い)。 文字数に基づく読了所要時間は13分で、テキストの情報量が多い。 |
|
| 情報の質 | 特優 | 「解説」➡「事例説明」の階層構造があり、テキスト単独で理解しやすい。 |
AIが設計した演習
次のテーマは「④演習案と回答例(単元単位)」で、カリキュラム案に対応した具体的な演習問題を設計させた。
単元2:思考の解像度を上げる:知りたいことを言語化する技術
| 演習内容 | 「新しい趣味を見つけたい」という漠然とした希望を、5W1HやMECEのフレームワークを使って具体的に分解し、最終的にAIに質問できる形まで落とし込む。 | |
| 例 | どのような趣味か?(活動内容) | |
| どのくらいの時間を使えるか? | ||
| 予算は? | ||
| 一人でできるか? | ||
| 目的は?(リフレッシュ、スキルアップなど) | ||
| 回答例(分解例) | 目的 | ストレス解消と新しいスキル習得 |
| 活動内容 | 屋内で一人でできるもの | |
| 手先を使うもの | ||
| 初期費用が安いもの | ||
| 時間 | 週に2〜3時間 | |
| 平日の夜または週末の午前中 | ||
| 予算 | 月5,000円以内 | |
| 求めるアウトプット | 3つ以上の具体的な趣味の提案と、それぞれのメリット・デメリット | |
| 始め方 |
| 回答例(AI向けプロンプトの構成要素) | 役割 | 趣味の専門家 |
| 目的 | ストレス解消・スキルアップ | |
| 条件 | 屋内 | |
| 一人 | ||
| 手先を使う | ||
| 週2-3時間 | ||
| 月5000円以内 | ||
| 求める情報 | 具体的趣味の提案 | |
| メリット・デメリット | ||
| 始め方 | ||
| 形式 | 箇条書き |
| 筆者評価 | 優 | Gemini が設計した演習問題は、個人演習+グループワークで、思考させた上で、他の受講者の思考を吸収させる考察型の演習になっている点が受講者の理解を促進する良問と言える。 この演習問題は、思考習慣がある(脳を使う活動を楽しむ)受講者を想定しており、やや高学歴な受講者向けと言える。 |
AIが設計した到達度テスト
最後のテーマは「⑤到達度テスト案(到達目標の達成状況を測定できるテスト内容)」で、講座目標に対応した到達度テスト問題を設計させた
⑤到達度テスト案(到達目標の達成状況を測定できるテスト内容)
| 本テストは、単なる知識の確認だけでなく、実際のプロンプト作成能力と、AIとの対話を通じて問題を解決する能力を総合的に測定します。 |
A. 思考の明確化と表現力テスト(筆記・記述式)
| 1 | 課題の言語化 | 20点 | 採点基準 |
| 以下の漠然としたニーズに対して、あなたが本当に知りたい/欲しい情報を具体的に5W1Hを使って分解し、明確に記述してください。 「最近、仕事の効率が悪い気がする。どうにかしたい」 | 課題の具体的な分解度 客観性 明確性 |
||
| 2 | 曖昧表現の具体化 | 20点 | 採点基準 |
| 以下のAIへの指示に含まれる曖昧な表現を、AIが理解しやすい具体的な言葉に書き換え、その理由を説明してください。 「このデータ、ざっくり分析して、分かりやすくまとめて」 | 具体化の適切性 理由の論理性 |
||
B. プロンプト作成と評価テスト(実技・AIツール使用)
| 1 | 目的別プロンプト作成 | 30点 | 採点基準 |
| あなたが所属する企業(または架空の企業)の「新規事業企画」をテーマに、以下の2つの目的を達成するためのプロンプトをそれぞれ作成し、AIツールに入力して回答を得てください。 目的1: 情報収集(例:既存市場のトレンド、競合他社の動向、技術の進展など) 目的2: アイデア創出(例:新しいビジネスモデル、サービス内容、ターゲット層など) |
プロンプトの構成要素の適切性 指示の明確性・具体性 制約の有効性 |
||
| 2 | AI回答の評価と改善提案 | 30点 | 採点基準 |
| 上記でAIから得られた回答を基に、以下の観点で評価してください。 質問の意図との合致度(的確性) 情報の網羅性 創造性・新規性 もし回答が不十分であった場合、より良い回答を得るために、元のプロンプトをどのように修正・改善するかを具体的に記述し、その修正理由も説明してください。 | 評価の客観性・妥当性 改善提案の具体性・実現可能性 論理的思考力 |
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| 筆者評価 | 特優 | 実際のプロンプト作成能力と、AIとの対話を通じて問題を解決する能力を総合的に効果測定する問題であり、理解度の深さを測定する良問と言える。 |
AIの講座設計能力への筆者の総合評価
Geminiは、受講者層が思考を苦にしない人(知的エリート候補層)寄りの講座を提案した。
想定する受講者の知的水準が高い分、対象者数が減るだろうが、AIを「自分を差別化する」ためのツールで使いたい層には、Geminiの講座は評価されそうだ。
なお、2019年に公開された日本政府のAI戦略との対比でみると、Geminiの講座は「応用基礎教育」にマッピングできるだろう。
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