生成AIが世界中で大流行し、いろんな生成AIが提供されている。利用者目線では、どの生成AIを使うのが得策か悩ましい。
本記事は、代表的な生成AIに同じ指示を与えて高度な教育講座を作らせ、その成果物から性能を比較する野心的な試みだ。
生成AIは膨大な計算を行うため大量の電力を使うが、DeepSeek は「少ないコンピュータ資源で動作するエコ型AI」を売り文句とする中国製AIだ。
本記事では、生成AI「DeepSeek」に作らせた教育講座の成果物を、筆者が講座設計者の観点で評価する。
なお本記事末に、他の生成AIへの「考案させた」シリーズのリンク集を設けた。
本試みに基づく各生成AIの性能ランキングは「生成AIを比べてみた - 生成能力ランキング」を参照。
| “DeepSeek” に考案させた「AIに乗り遅れない方法」 | 松浦公政 | 2025年 | |
| 対象読者 | AIの利用能力を高めさせる教育カリキュラムに興味がある教育関係者 | ||
| 自分のAIの利用能力を高める方法に興味がある方 |
|||
| DeepSeekに興味がある方 | |||
AIの利用能力の身につけ方をAIに考えさせた
日本でのデジタル・デバイド(利用能力で区分する「使える人/使えない人」)の分水嶺(分かれ目の境界線)は『コピー機』➡『パソコン』➡『スマホ』➡『SNS』と変遷したが、今まさに『AI』が分水嶺になった。
そこで、AIの知識がない一般の人がAIの利用能力を身につけるには何が必要かを DeepSeek に考えさせ、講座を設計させた。(2025年7月6日実施)
すると、DeepSeek はまだまだ発展途上な生成AIだった。
AIを活用する能力は、これからの世の中では重要な能力です。
ただし、AIを活用するには、AIと十分に意思疎通できなければいけません。
そのためには、次の課題を解消する必要があります。
・自分が知りたい/欲しい情報が何かを十分に自覚できる
・自分が知りたい/欲しい情報を客観的・具体的に表現する語彙力
・自分が知りたい/欲しい情報をプロンプトに表現する作文力
上記の課題を解消する人を増やしたいです。
しかし、現実には上記の課題が存在することすら理解してない人が大半です。
この結果、人間がAIに質問するときに、人間に質問する要領でプロンプトを作ります。
しかし、AIは「言葉の意味」を人間とは異なる方法で理解し、データを処理しています。このため人間の質問の意図がAIに伝わらず、AIが的外れな回答を返すことがあります。
こういう質疑応答を経験した人間はAIへの期待が低下し、AIを活用する能力を進展させる向上心を持てません。
この状況を改善するために、多くの人がAIを活用する能力を高められる教育講座を設置したいです。
ここまでに記述したプランに対して、教育現場での応用という観点で、このテーマについての教育評論家との立場で意見を教えてください。
次に、あなたは前述の課題を解消する教育講座の設計者として振舞い、以下を提案してください。
①講座企画「講座名・講座目的(200字)・到達目標(3点以内)・受講前提条件(200字)・講座概要(単元名・単元の所要時間と演習時間を単元単位で)・受講定員」
②カリキュラム案(単元)
③テキスト案(HTML形式文書)
④演習案と回答例(単元単位)
⑤到達度テスト案(到達目標の達成状況を測定できるテスト内容)
ステップ・バイ・ステップで考え、あなた自身を信じて限界を超えてみましょう。
AIの利用能力を高める「教育講座」が必要だとAIが言った
前記のプロンプトの中盤に、「ここまでに記述したプランに対して、教育現場での応用という観点で、このテーマについての教育評論家との立場で意見を教えてください」と書いた。
この指示に、DeepSeek は次のように回答した。
AI活用の能力向上に向けた教育講座の設置は、現代の教育において非常に重要な提案です。AIは多くの産業において不可欠なツールとなっており、その効果を最大限に引き出すためには、良好なコミュニケーションが求められます。しかし、多くの人々がAIと適切に意思疎通するためのスキルを持たない現状は、今後の技術革新に対する障害ともなりかねません。これに対応するためには、AIの特性を理解し、効果的なプロンプト作成スキルを育てる必要があります。 特に教育現場では、学生にAIの利用方法を教える際、単に技術的な側面だけでなく、言語や表現力の向上も同時に図ることが重要です。教育者は、学生が自らのニーズを正確に認識し、それをAIに伝えるためのプロンプトを効果的に構築できるように指導することが求められます。また、そうした能力を育成するプログラムは、学生がAIを活用する際の自信を高め、より主体的な学びを促進します。
| 筆者評価 |
可 |
DeepSeekは、「AIの利用能力を高める教育講座」を高く評価した |
AIに提案させた教育講座設計の内容
AIが設計した講座企画
前記のプロンプトの後半は、「あなたは前述の課題を解消する教育講座の設計者として振舞い、以下を提案してください」と書いた。
最初のテーマは「①講座企画「講座名・講座目的(200字)・到達目標(3点以内)・受講前提条件(200字)・講座概要(単元名・単元の所要時間と演習時間を単元単位で)・受講定員」。
| 講座名 | AI活用スキル向上講座 | |||
| 講座目的 | この講座は、AIを効果的に活用するための基礎知識と実践技術を習得することを目的としています。受講者は、自らが知りたい情報を明確に認識し、客観的かつ具体的に表現する能力を養います。更に、AIに対するプロンプト作成の技術を学ぶことで、AIとのコミュニケーションスキルを向上させ、より正確な情報を引き出せるようになります。 | |||
| 到達目標 | 1 | 自分の求める情報を客観的に整理し表現する力を養う | ||
| 2 | AIとのコミュニケーションに必要な基本的なプロンプト作成スキルを習得する | |||
| 3 | AIを通じた学びを活用し、主体的に情報を収集する能力を高める | |||
| 受講前提条件 | この講座の受講には特別な前提スキルは必要ありませんが、基本的なパソコン操作能力と、インターネットを通じた情報検索に慣れていることが望ましいです。また、自分の興味や関心を持つテーマについて知識を持ち、質問を考えることができることが求められます。受講者は、講座を通じて自らの疑問を掘り下げ、AIに対する理解を深めるための意欲が必要です。 | |||
| 講座概要(単元構成) | 単元名 | 所要 | 演習 | |
|---|---|---|---|---|
| 1 |
AIを理解するための基礎 | 60分 | 30分 | |
| 2 |
情報の整理と要約技術 | 60分 | 30分 | |
| 3 |
ケーススタディとフィードバック | 60分 | 60分 | |
| 受講定員 | 20名 | |||
| 筆者評価 | 不可 | DeepSeek は、講義時間が5時間と小型講座を提案した。 DeepSeek は教育評論家の見解で「AIの利用方法を教える際、単に技術的な側面だけでなく、言語や表現力の向上も同時に図ることが重要です」との意見だったにも関わらず講座内容は表面的で深みがない。 教育評論家の立場での意見と整合しておらず、生成AIとしての性能に疑問符がつく。 |
AIが設計したカリキュラム(単元構成プラン)
次のテーマは講座企画に基づく「②カリキュラム案(単元)」で、具体的な講義の構成(アウトライン)を設計させた。
| 単元 | 学習目標 | 学習内容 |
|---|---|---|
| 1 | AIを理解するための基礎 | AIの基本概念についての説明 |
| AIが情報を処理する方法に関する理解 | ||
| Q&A | AIの特性に関する質問と理解を深める | |
| 2 | 情報の整理と要約技術 | 自分の関心事を明確にするワークショップ |
| 情報収集と要約の手法 | ||
| 演習 | 自分のテーマに関連する情報の整理 | |
| 3 | 効果的なプロンプト作成 | プロンプトの基本構造と重要性 |
| 良いプロンプトの要素と実践 | ||
| 演習 | 実際にプロンプトを作成し、AIに活用する | |
| 4 | ケーススタディとフィードバック | 具体的なAIとのやり取りを振り返る |
| 作成したプロンプトに対するフィードバックセッション | 次のステップに向けたアドバイス |
| 筆者評価 | 不可 | DeepSeek は、カリキュラムの設計内容が抽象的なレベルに止まっており、専門家が設計レビューするに値する成果物水準には到達していない |
AIが設計したテキスト
次のテーマは「③テキスト案(HTML形式文書)」で、カリキュラム案に対応した講義のテキストを設計させた。
| 筆者評価 | 印象 | 不可 | テキストの完成度は、ほぼゼロ。 |
| 外観 | 不可 | 意匠の工夫は皆無。 | |
| 情報の量 | 不可 | ほとんど内容がない。 | |
| 情報の質 | 不可 | 何を説明するかのアウトラインのみで、テキストの内容を評価不能。 |
AIが設計した演習
次のテーマは「④演習案と回答例(単元単位)」で、カリキュラム案に対応した具体的な演習問題を設計させた。
演習単元: 情報の整理と要約技術
| 演習内容 | 自分が興味のあるテーマ(例: 環境問題、AIの教育への応用など)を選び、そのテーマに関連する情報を3つ収集して要約してください | |
| 提出例 | テーマ | 環境問題 |
|---|---|---|
| 情報 | 地球温暖化についての科学的な背景 | |
| 要約 | 地球温暖化は、温室効果ガスの増加により、地表の温度が上昇する現象である | |
| 情報 | プラスチックごみの海洋汚染 | |
| 要約 | 世界中の海域でプラスチックごみが増加しており、生態系に深刻な影響を及ぼしている | |
| 情報 | 再生可能エネルギーの普及状況 | |
| 要約 | 再生可能エネルギーは、化石燃料の削減を目指し、世界各国での導入が進んでいるが、普及には課題も残る | |
| 筆者評価 | 不可 | DeepSeek が設計した演習案の対象は単元2のみ。 問題の説明も不十分で、受講者の立場で見ると漠然として解答方法がよくわからない演習という低品質だった。 |
AIが設計した到達度テスト
最後のテーマは「⑤到達度テスト案(到達目標の達成状況を測定できるテスト内容)」で、講座目標に対応した到達度テスト問題を設計させた。
| No | 評価項目 | 問題 |
|---|---|---|
| 1 | 自分の求める情報を整理し表現する力を評価する問題 | あなたの興味があるテーマを1つ選び、その背景情報を整理し、短い要約を作成してください(200字以内) |
| 2 | AIとのコミュニケーションに必要なプロンプト作成スキルを評価する問題 | 以下のテーマについて、AIに対して適切なプロンプトを作成してください。「気候変動の影響と対策」 |
| 3 | AIを通じた学びを活用する能力を評価する問題 | AIから得られた情報を使って、自分のテーマに関する新たな見解を述べてください(300字以内) |
| 筆者評価 | 不可 | DeepSeek が出力した到達度テストは、到達目標との関係性も示さず、プロンプトの指示内容を理解できないほどの低品質だった。 |
AIの講座設計能力への筆者の総合評価
DeepSeek は2025年7月時点では、講座設計という高度な成果物を出力させると質・量とも不足で、「残念なAI」と評価せざるを得ない。
一方で、生成AIはサーバの消費電力が桁違いに大きく(小都市一個分との言説あり)、生成AI普及の障壁となっている。
このため、エコなAIをセールスポイントとしている DeepSeek には期待が大きい。
「エコなAIサーバは低性能」との烙印が押されぬよう今後の発展を期待したい。
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