実践的な提案力を持つITコンサルタントの特徴を3回に分けて考察する。本稿はITコンサルタント向け3部作記事の最終号で、コンサルタントが提供する「コンサルティングの品質」とは何か、コンサルティング品質の「評価基準」を考察する。
| ソフトウエア設計シリーズ「離」⑤ |
コンサルティング品質の決め手 | 松浦公政 | 2026年 | |
| 対象読者 |
コンサルティングの品質に興味があるITコンサルタント | |||
| 高品質なコンサルティングに必要な知的能力に興味があるITコンサルタント | ||||
| コンサルタントを評価する基準に興味がある方 | ||||
記事の音声解説付き(下のプレイボタンで解説開始)
コンサルタントが求められる思考品質
| コンサルティングの思考過程 | コンサルティングは、クライアントが抱える具体的な課題に、具体的な対策(解決策)を提供する活動だ。 |
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| コンサルタントは、課題を抽象化して(変化球)から、解決策を思考する。 抽象化した課題の解決策を考案する際は、知恵溜(過去の経験・知見の蓄積)の充実度が命運を分ける。 |
医師はコンサルタントではないが、コンサルタント的な側面はある。説明の便宜上、医師をコンサルタントと見立て、「変化球で思考する」医師と、「直球で思考する」医師を比較して、コンサルタントが求められる思考品質を考察する。
| 具体的な課題 | ➡ | 抽象化した知恵 | ➡ | 具体的な対策 | ||
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| 共通点を分析 | ➡ | 抽象的な方針 | ||||
| 倦怠感がある |
身体に侵入した病原体を駆除する免疫機構の活動が多くのエネルギーを使っている。【共通点】 |
病原体との戦闘を、身体側に有利に進めさせる目的で、免疫の働きの向上を狙って、外部から支援する【行動指針】。 |
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| 鼻水が出る | ||||||
| 食欲がない |
【分析】その影響で ⇩ |
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| 熱がある |
活気がなく、発熱・鼻水の症状。 |
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上例の課題を持つ人にとって ⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩ |
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狙い・目的 ⇧ | 対策 ⇧ | |||
| 「狙い・目的・行動指針」で抽象的な方針を示す。その上で、すぐ実行に移せる具体的な行動を示す。 |
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| 抽象的な方針と具体的な対策の両方を示すと ⇩ | ||||||
| クライアントは『腑に落ちる納得感』を感じやすい。 | ||||||
| だとすれば ⇩ | ||||||
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コンサルタントの価値を決める要素は、上のグラフの構成と割合と考えてよい。 |
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つまり ⇩ |
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| 説得力あるコンサルタントの説明とは |
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「お渡しするお薬を飲んで寝てください」 | ⇦ |
コンサルタントに求められる思考力のうち、「抽象的な方針(目的・狙い)を言語化する能力」が、コンサルタントの価値を決める重要な要因だ。 |
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| すぐ実行できる具体的な行動だけを説明。 | ||||||
| ○ | 「あなたの体内での病原菌との格闘を助けるため、薬を飲んで安静にすると、早く治るでしょうね」 | |||||
| 抽象的な方針と具体的な対策の両方を示し、加えて対策が持つ価値(効果)を予言。 | ||||||
コンサルティング品質とは、提案する対策の出来栄え
コンサルタントは専門家であり、専門分野の経験に基づく「知識」「知恵」を発揮するように期待される。
| コンサルティング品質を生む要素 | ||
|---|---|---|
| ① | 知識量 | 多彩な対策案が入った引き出し(知恵溜)を持つ。 |
| ② | 応用力 | 専門とする分野の多種の対策案を応用する能力を持つ。 |
コンサルタントは、ソフトウエア設計の『守・破・離』の成長段階では「離」-ソフトウエア以外の知恵溜も利用してシステムを革新的に発展させられる-水準に到達していることが望ましい。
「コンサルタント」と「『破』水準の設計者」の違いは、当初の対策が不十分だった場合に、より効果的で「より洗練した対策」を思考する能力の差に表れる。
とはいえ、上図の「より洗練した対策」にも限界はあり得る。そういう状況で「『離』水準のコンサルタント」は、他の専門分野の知恵を活かした対策を考案する。
「『離』水準のコンサルタント」は、専門分野や業界を横断する知識(多彩な対策案が入った知恵溜)を持つ。
その幅広い知識を生かして、得意分野や専門分野の枠に捕らわれず幅広い視野で柔軟に思索し、専門分野の設計者が気付きにくい革新的な対策(例:二次元バーコードの設計に、囲碁の格子の構造を参考にする)を考案する。
| 『離』レベルのコンサルタント | ||
|---|---|---|
| ① | 知識量 | 分野や業界を横断する多彩な対策案が入った引き出し(知恵溜)を持つ。 |
| ② | 応用力 | 分野や業界を横断する広範な領域の対策案を応用する能力を持つ。 |
このような知的活動こそ『知恵の和』と呼ぶに相応しい。
「リアルタイム系システム」「Web系システム」「非IT系システム」の仮想事例(便宜上、現実とは合わない事例を含む)で、「コンサルタント」と「『破』水準の設計者」が考える「対策の質」から「コンサルティング品質」を考察する。
| システム | 自動運転車両の障害物検知 | 特性 | リアルタイム要求が強い組込みシステム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 衝突を回避するために、自動運転車両の進行先にある障害物を検知する | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 考案者 | 具体⇔抽象の階層イメージ | 対策の内容 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 「破」の設計者 | ![]() |
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| ⇧『破』の設計者は第1階層(具体的な対策)で止まる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 『離』のコンサルタントは第1階層を起点に、第2階層(高度な対策)や第3階層(革新的な対策)まで思考を伸ばせる。⇩ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 考案者 | 具体⇔抽象の階層イメージ | 対策の内容 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 「離」のコンサルタント | ![]() |
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| システム | 動画配信サイトの「おススメ」システム | 特性 | 刻々と変わるユーザの嗜好を推測するシステム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 動画配信サイトで、ユーザの興味を惹きそうな動画のサムネイルを表示して、視聴時間を増やす | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 考案者 | 具体⇔抽象の階層イメージ | 対策の内容 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 「破」の設計者 | ![]() |
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| ⇧『破』の設計者は第1階層(具体的な対策)で止まる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 『離』のコンサルタントは第1階層を起点に、第2階層(高度な対策)や第3階層(革新的な対策)まで思考を伸ばせる。⇩ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 「離」のコンサルタント | ![]() |
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| システム | 投手育成システム | 特性 | 属人性を抑制する投手育成指導者用プロセス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 素質を開花できない投手を、信頼できるローテーション投手へ成長させる標準プロセス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 考案者 | 具体⇔抽象の階層イメージ | 対策の内容 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 「破」の設計者 | ![]() |
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| ⇧『破』の設計者は第1階層(具体的な対策)で止まる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 『離』のコンサルタントは第1階層を起点に、第2階層(高度な対策)や第3階層(革新的な対策)まで思考を伸ばせる。⇩ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 「離」のコンサルタント | ![]() |
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まとめ:コンサルタントに必要な知的能力とは
コンサルタントを名乗る人材も一流から百流まである。千差万別なコンサルタントに共通する評価基準は、どのような知的能力を、どの程度まで備えているかで測れる。
| クライアントにコンサルティングするに当たり、コンサルタントの基盤となる知的能力 | ||||
| 分類 | 工程 | 知的能力 | 難度 | 説明 |
|---|---|---|---|---|
| カイゼン | 問題発見 | 調整力 | 高 | 利害関係者と円滑に情報収集・交渉する能力 |
| 抽象視力 | 高 | 具体事象を、課題解決の視点で抽象的に捉える能力 | ||
| 問題定義 | 決断力 | 極高 | 近視眼的な欲求や先入観の影響なく要所を見定める能力 | |
| 問題解決 | 選択力 | 低 | 候補の中から問題・課題に適合するモデルを選ぶ能力 | |
| 補正力 | 中 | 選択したモデルを対象問題に適合させる能力 | ||
| 全般 | 抽象化力 | 高 | 情報整理の際に、具体事象や経験等を汎化して記銘する能力 | |
| 知見蓄積 | 内省 |
日常生活の端々でエッセンスを抽出し、想起しやすく整理する内省習慣が、広範で洗練した知恵溜を醸成する |
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上表で、高難度な知的能力が高いコンサルタントほど、クライアントに価値をもたらし、信頼される存在になり得る。
| 人物像 | 信頼度 | 類似する職業別に見た「信頼を得る行動」のイメージ | ||
| 布教者 | 政治家 | コンサルタント | ||
| 賢者 |
傾聴し対話して説得する。 |
有権者のメリット(減税)に加え、負担軽減の代償(予算削減で警察官が減る)もアピールする。 | 抽象的な方針と具体的な対策の両方を示す。 | |
| ↕ | ↕ | ↕ | ||
| 凡夫 | 「信じてよ」一辺倒の自己主張で説得する。 | 有権者のメリット(負担軽減)だけアピールする。 | 具体的な対策だけを示す。 | |
関連記事リンク
ソフトウエア設計シリーズのITコンサルタント向け記事は下表のリンクから。
| 一番記事 | ITコンサルタントの思考スタイル |
| 二番記事 | 階層的な問題解決 |
| 三番記事 | 本記事 |
| 次回は「知の水準と抽象化能力-AIを使いこなす設計者とは」(開発中)を解説します。 ソフトウエア設計シリーズ全体の目次はこちらへ |
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